相続税計算のシミュレーション活用と注意点
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相続税計算シミュレーションの活用
相続税計算シミュレーションは、故人から財産を引き継いだ時に、どの程度の相続税がかかるのかをざっくりと把握するのに便利です。
具体的には、以下の活用方法が挙げられます。
・遺産分割内容を決める上での確認
・相続税の納税資金がどの程度必要になるかの確認
・相続の発生後に相続税申告が必要か否かの確認
それぞれ詳しく見てみましょう。
遺産分割内容を決める上での確認
法定相続人が複数おり、かつ遺言書がない場合における遺産分割は、法定相続人全員が集まり遺産分割協議で決めるとされています。できるだけ早く最適な遺産分割を提示したい時に役に立つのが、相続税計算シミュレーションです。
例えば、父が亡くなり母と子の合計4人で遺産を分割する必要があるとしましょう。手動で計算することも可能ですが、複数の算式に該当する数字を当てはめながら計算することは手間がかかりますし、計算ミスが発生するリスクもあります。その点シミュレーションは、必要な情報を入力するだけで、各法定相続人の相続税を瞬時に計算してくれます。
フィデリティ証券が公開している『相続税シミュレーション』を使って、父の遺産1億円を母と3人の子で分割する場合の相続税を計算してみましょう。
入力した遺産の内訳は、以下のとおりです。
・現金・預貯金2,000万円
・その他金融資産3,000万円
・不動産5,000万円
・ローン等の債務 0円
すると、以下の納税額が算出されました。
・母 0円
・子:1人あたり87万円
母の納税額が0円になっているのは、配偶者控除を加味しているためです(控除を利用しない場合の母の納税額は262万円)。このように、相続税計算シミュレーションは法定相続人にかかるおおよその相続税額を試算します。導き出された数字から、どのように遺産分割すべきかがより明確になるでしょう。
相続税の納税資金がどの程度必要かの確認
相続税は、相続する財産の金額に応じて高額になります。そのため、相続税が高額になることが予想される場合は、ある程度の資金(納税資金)を確保する必要が出てくるでしょう。
相続税計算シミュレーションを使えば、かかる相続税をざっくりと把握できますので、それを目安に計画を立てられます。上記の例でいいますと、子が納める相続税は、一人あたり87万円であると予想されました。この数字をもとにすれば、「相続税のために毎月◯万円ずつ貯金しよう」など、納税資金の計画的な準備が可能となるでしょう。
相続の発生後に相続税申告が必要か否かの確認
相続税には基礎控除が適用されるため、相続税が発生するのは課税価格の合計が基礎控除額を上回る時です。
基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で算出されます。例えば、遺産を4人の法定相続人で分割する場合の基礎控除額は、5,400万円です。
3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円
課税価格の合計が6,000万円の場合は、「6,000万円-5,400万円=600万円」となり、相続税がかかります。しかし、課税価格の合計が4,500万円の場合は、基礎控除額を下回るため相続税は発生しません。
相続税の申告には時間と手間がかかります。ざっくりとした相続税額を知るだけでも、申告の有無をすぐに確認でき、相続税について無駄な時間を費やす必要がなくなるでしょう。