もっと早く知りたかった!家族信託を自分でやる際の注意点

家族信託の活用例~自分でやる際に当てはめてみましょう。

自宅を売却して、介護施設に入る際の原資とする

東京都内の介護付有料老人ホームの入居にかかる費用の相場は、年間3,876,000円(LIFULL介護WEBサイト掲載情報より)。施設生活が5年間であれば、1,938万円となります。なお、この金額には、介護サービス費や医療費、消耗品費等は含まれず、別途必要となります。年金のみで賄える金額ではなく、施設に入所すれば、預貯金を切り崩しての生活となるのが一般的でしょう。
40代、50代といった若いうちであれば、投資信託等長期的視点で資産運用していくことで、老後資金を用意していくといった対応を検討することができますが、経験則上、家族信託をご検討される方のほとんどは、75歳以上の方で、この世代になると、長期的視点での資産運用というのは、平均余命から考えると、難しいところがあります。
お金を準備するには、シンプルな理屈で、①収入を増やす、②支出を減らす、③資産を増やす、④資産を組み替えるの4つの方法があります。
このうち、①と③はご高齢となると難しく、②については、これまでのライフスタイルを圧迫することとなります。そこで、④の選択肢、具体的には、不動産の現金化を推奨します。
ただし、不動産の売却には、相応の判断能力が必要となり、売却時点において、認知症等により判断能力が減退していると、不動産売却が出来ない可能性がございます。
これに備え、介護施設に入るタイミング等、任意の時期に不動産の売却が支障なく行えるようにする方法として、家族信託が有用な手段となります。

介護施設入居後、自宅をリフォームして賃貸に出す

介護施設入居に伴い、自宅が空家となった場合に、賃貸に出すことで有効活用が可能です。賃貸に出すメリットとしては、賃料収入が入るのみだけでなく、相続税の評価において、居住用不動産の小規模宅地等の特例を使えない場合に、貸付用地としての評価減と、賃貸事業不動産の小規模宅地等の特例を適用できるようになることによる相続財産評価額の減額とで、相続税対策になることが挙げられます。また、反対に、空家となって、管理コストが掛かるのを避けるべく売却をしてしまうと、現金化されてしまうことで、不動産として承継するよりも、相続税の評価上の財産額が上がってしまうデメリットがあります。
また、不動産の立地条件にもよりますが、相続人の立場から考えると、土地の仕入れ費用が掛からない分、将来的に、建替えて運用することに経済合理性があることから、不動産を売却する必要性がない場合には、介護施設費用の確保等のために、まずは、賃貸に出して運用する方向で考えることが、相続人である子世代、孫世代における資産形成において重要となります。
しかし、ここで問題となるのが、賃貸に出す時点における判断能力です。
賃貸に出すには、賃貸借契約や賃貸媒介事業者や保証会社への委託契約等が生じます。また、多くの場合には、賃貸に出す前提として、リフォームや修繕が必要になります。これらを行うには、相応の判断能力が必要となります。
一般的に、可能な限り自宅で生活したいとお考えの方が多く、介護施設に入居される段階では、自宅での自立生活が困難な状態となってからなることが想定されます。そのため、リフォームや賃貸に伴う各種契約の段階では、判断能力が不十分となっている可能性があります。
このような問題の回避に家族信託が有効です。

賃貸アパートを建て替える

賃貸アパートを次世代においても売却することなく運用していく方針で、物件が老朽化しているような場合には、相続が発生する前に建替えを行うことで、相続税対策の効果が見込めます。相続発生後に建て替えを行っても相続税に影響はありませんが、相続発生前に行うことで、建物評価額と建築及び附帯費用の差額の分、相財財産を圧縮するこなるためです。
この際に問題となるのが、建築請負契約締結、賃借人の退去手続き、建物解体、測量や境界確定、融資、登記、賃貸経営など建て替えに必要なプロセスでの行為に関するそれぞれの時点における判断能力の有無です。いずれの工程においても、本人の判断能力が必要となりますので、その時点において認知症等になっていると、それ以降の工程のお手続きが出来ず、建替えは出来なくなってしまいます。
家族信託を利用することで、こうした事態を避け、建替えが出来るようになります。

賃貸収入を維持し、自身と妻(夫)の生活費に支障がないようにする

賃貸収入が生活基盤となっていて、これが滞ると生活に支障が出てしまうような場合、賃貸経営の維持は死活問題となります。特に、夫が存命のうちはある程度の年金もあり、賃貸収入への依存が小さくても、夫が先に他界した場合の妻の生活において、年金が少なく、賃貸収入への依存が大きくなることがあります。
賃貸経営には、入退去、修繕、家賃滞納対応、設備入れ替え等、法律行為が断続的に発生します。サブリースや管理委託をされている場合、家賃相殺で、一括借り上げや管理委託先が軽微な修繕等してくれることもありますが、限界があり、オーナーの承諾が必要な事項があります。
こうした手続きや承諾といった行為は法律行為であり、相応の判断能力を欠いていると、実行が出来ず、結果として、賃貸経営に支障が生じる可能性があります。こうした事態を防ぐために、家族信託が有効です。
蛇足になりますが、街の不動産屋さん等、小規模企業に管理委託されている場合や、入退去のみ不動産屋さんに任せ、管理はご自身でされているケースにおいて、重度の認知症等明らかに判断能力を欠いている親に代わり、子が親の名前で署名し、印を押すといったことが、実態して行われていることが多くあるのですが、こうした対応は、法的には無効で、賃貸トラブルが生じた際や、相続が発生した際、後見人が就任した際に、問題が顕在化し、トラブルとなる可能性があるので、注意が必要です。

土地を直系の血族に代々承継させていく

ご先祖から承継してきた土地を先々も守っていって欲しい、土地の名義が分散されることなく承継されていって欲しい等のニーズに対して、家族信託であれば、本人⇒妻(夫)⇒長男⇒孫と、自身の相続発生時だけでなく、その先の相続発生時の財産帰属も指定することが可能です。
ただ、遺留分の問題は生じるため、遺留分放棄や代償金の用意等のケアは必要となります。

司法書士 菱田陽介

<strong>菱田陽介</strong>

司法書士の菱田陽介と申します。90年以上、大田区を中心に、地域に根差して司法書士業務を行ってきた司法書士法人の4代目です。先代の紡いできた歴史を受け止め、尊重しつつ、これからも地域の皆様のお役に立っていけるよう、時代に対応した、新たな司法書士としての形を模索しながら、日々邁進しております。

専門分野・得意分野
家族信託、税務、財産活
資格
  • 司法書士(法人登録番号:11-00632 登録番号:6212)
  • 簡裁代理(認定番号:1101045)
所属団体名
東京司法書士会
所属事務所
菱田司法書士法人
所属事務所の所在地
東京都大田区大森北1-15-14 第11三井ビル4階

活動実績・専門分野

2023年東京司法書士会民事信託業務検討委員会副委員長、2024年東京司法書士会資産凍結及び相続対策検討委員会委員長を務める等、家族信託、相続分野において高い実績。
大田区地域に根差し、他業種と連携の上、お客様の総合的な支援を行っている。

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私たちは、司法書士と税理士を中心とする、相続や家族信託のプロフェッショナルです。「何をすればいいか分からない」といった段階からご相談頂けますので、お気軽にご相談下さい。

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