家族信託とは。司法書士がわかりやすく簡単に解説!
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家族信託とは。注意点を解説!
融資や金融資産運用で不利になる可能性がある
家族信託は、新たな仕組みであることもあり、金融機関の対応が追い付いていない側面があります。その影響で、結果として、融資や金融資産運用における問題が生じています。
家族信託により、受託者が信託財産を担保及び返済原資として起こす借入を信託内借入と呼ぶのですが、信託内借入は、対応している金融機関が限定的なのです。そのため、融資元金融機関の選択肢が狭まるという不利益が生じます。
証券会社や銀行、信用金庫(以下、証券会社等)においても、家族信託に対応している証券会社等が限定的で、対応している証券会社等でも、株取引は対応しないなど、制限があることがあります。そのため、家族信託による金融資産運用が事実上限定されてしまうのです。(信託財産として運用する場合であり、家族信託後も、信託外財産の金融資産運用は影響を受けません)
税制面で不利になることがある
家族信託の利用により、税制面で不利益が生じることがございます。例えば、損益通算が出来ない、空家特例が使えないといった不利益があります。
損益通算が出来ないというのは、賃貸アパートを2棟お持ちの方が、1棟のみ信託財産とした場合に、信託されているアパートと信託されていないアパートの間における損益通算が行えないということです。
空家特例が使えないというのは、相続発生後に故人の自宅を売却した場合に、最大3,000万円まで譲渡所得計算上の利益を控除できる特例が、信託により承継した不動産については使えないということです。
「受益者のために」財産を管理、運用しなければならない
家族信託は後見制度よりも柔軟な財産の管理が可能で、積極的な財産活用も可能です。しかしながら、「受益者のため」にという拘束があります。
例えば、受益者ではない子供のために、信託財産を用いて自宅を建ててあげることや、担保提供するようなことは困難ですし、信託財産から直接生前贈与をしていくようなことも困難です。いずれも、受益者の利益は皆無であるためです。
受託者は「他人」の財産として管理しなければならない
受託者は、親の財産を管理するとしても、他人の財産を管理するのと同様のレベルで注意を払って管理していく必要があります。親子だからと、てきとうな管理をしてはならないということです。
具体的な日常業務としては、会計帳簿を付け、エビデンスを備えた会計資料を作成し、受益者に報告し、必要に応じて税務署への届出をしなければなりません。
後見ほどではないですが、受託者に事務負担があるということです。