家族信託とは。司法書士がわかりやすく簡単に解説!
- 公開日:
- 更新日:
家族信託とは。活用例をご案内!
将来、自宅を売却して、介護施設に入る際の原資とする
東京都内の介護付有料老人ホームの費用相場は、年間3,876,000円※で、介護サービス費や医療費、消耗品費等は含まれず、別途必要となります。勿論、多くの方がご自宅での生涯を望まれるでしょうから、有料老人ホームを利用するかは分かりません。
大切なことは、選択の出来る状態を用意しておくことです。仮に、費用相場の施設生活が5年間となれば、1,938万円以上が必要となります。年金のみで賄える金額ではなく、預貯金を切り崩しての生活となるのが一般的ですから、潤沢な金融資産がない場合には、自宅不動産を売却して資金を用意することが考えられます。
この、自宅不動産を売却する時点において、判断能力が不十分な状態となっていると、売却が出来なくなってしまいます。
こうした事態を回避するために、家族信託の活用が可能です。
将来、空家となった自宅を賃貸に出す
自宅での自立生活が困難となり、介護付きの有料老人ホームでの生活となった場合、その期間が何年となるかは誰にも分かりません。その間も維持コストは掛かりますし、生活資金が十分にある中で自宅を売却してしまうと、相続税負担がより大きくなってしまいます。
そこで、不動産を賃貸化することで、収益を上げていく方法が考えられます。なお、賃貸化に当たっては、リフォームか建替えが前提として必要になることがほとんどですが、これにつきましては、資産運用と相続税、遺産分割と複合的観点から決定することとなります。
ここで問題となるのが、リフォームや建替えないし賃貸に出す時点における、判断能力の有無です。判断能力がその時点において不十分となっていれば、こうした施策の実行は出来ません。家族信託は、こうした将来いつになるか分からない時点の施策を、行うことができるようにしておくために活用が出来ます。
なお、家族信託をしたからといって、賃貸に出す等をしなければならなくなるわけではありません。将来のその時点において、決めればよいのです。
将来、賃貸アパートを建て替える
東日本、能登半島と大きな地震に見舞われ、首都圏においても、大震災が遠くない将来に発生すると言われている昨今において、旧耐震基準時に建築された老朽化した賃貸アパートのオーナーリスクはとても気になるところです。
相続税対策だけでなく、大きな地震による倒壊リスクを踏まえ、相続後ではなく、自身の代で建て替えをご検討される方が増えています。
ただ、賃貸アパートの建替えはすぐに出来るものではなく、現賃借人の契約期間満了時点をラインとして立ち退きを進める等、時間を要します。この間に、判断能力が減退してしまうと、建替えが出来なくなってしまう恐れがあります。
自身の判断能力が低下しても建て替えの実行が出来るように、家族信託が活用できます。
土地を直系の血族に代々承継させていく
先祖から承継してきた土地を後の世代においても、自身の直系に承継していって欲しい。
こうしたご希望のあるときに、家族信託が活用できます。
遺言や生前の贈与や売買では、自身の次へのバトンタッチしかできず、バトンを引き継いだ人の後の承継について拘束することは出来ませんが、家族信託であれば、一定の制限はあるものの、これが可能となります。