家族信託とは。司法書士がわかりやすく簡単に解説!
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家族信託とは。その仕組みを解説!
家族信託の仕組み
家族信託は、財産の管理や活用を任せる人と、これを任せる相手(子に限らず甥や姪でもOK)の契約により成り立ちます。(契約以外の方法でも成立しますが、ここでは割愛します)前者を委託者、後者を受託者と呼び、この契約では、「何の目的で、誰のために、どの財産をどれだけ、どのように管理し、いつまで行い、終了したらその財産をどうするか」といったことを決めます。これにより、自身の決めた相手が、自身が決めたルールに従って財産を管理し、自身が亡くなったあとは、自身の決めた人(受託者でなくてもOK)に財産を承継することができます。
家族信託すると財産名義が変わる
家族信託をすると、契約の中で信託すると決めた財産については、受託者の名義となります。例えば、不動産の名義は受託者に変更されます。ただ、この名義は少し特殊で、ただ受託者名義で登記されるのではなく、それが信託財産である旨の明示がされます。これにより、第三者は、受託者個人のものではなく、信託財産であることが分かるようになっています。このことは、金銭を預託する信託口座についても同様です。受託者は、自分の名義となっても、自分のために信託財産を使用してはならず、信託契約で定めたルールに従って、受益者のためにのみ使用することとなります。
委託者を信託太郎さん、受託者を信託受け太郎さんとした場合、上記のようになります。受託者である信託受け太郎さんへ所有権が移転していますが、その中には、信託の文言が明記され、信託目録番号が記載されます。登記簿には、信託目録も登記され、信託目録には、委託者や受託者等の情報を始めとした、信託契約の要約が記載されることとなります。登記簿謄本は、一般に公開されており、誰でも閲覧することが可能です。信託目録が記載される以上、その内容も公開されることとなります。そのため、信託登記手続きの際には、法定されている事項を除き、登記公示機能を利用することが必要・有用な最低限の情報のみが登記されるよう工夫することも大切です。
上記は信託口座の通帳イメージです。信託財産とする金銭の管理は、受託者の善管注意義務を果たす意味で、信託口座という少し特殊な口座で行うこととなります。金融機関によって口座名称は異なりますが、受託者個人の財産ではなく、信託財産であることが明示されるようになっています。
名義が変わっても、贈与税や譲渡所得税は掛からない
財産の名義が変わる場合、贈与税や譲渡所得税、不動産取得税などの課税の問題がありますが、信託契約に基づく名義の変更では、当初の受益者を委託者としておく限り、こうした課税はされません。信託財産に対する実質的な権利者はあくまで受益者にあり、受託者は財産の管理等をしているに過ぎないためです。なお、不動産の名義変更に伴う、登録免許税はこうした課税とは性質が異なりますので、信託に基づく変更でも収める必要があります。
家族信託が終了したら、指定した人に財産承継させることができる
家族信託は、契約において、いつ終了するかを定めます。よく行われるのは、委託者が死亡したときや、委託者と妻(夫)が死亡したとき(契約書の定め方とは異なります)とする形です。
こうして契約において定めた内容に従って信託が終了した際に、信託した財産がどうなるかですが、これは、受託者のものや遺産分割対象となるのではなく、契約において指定した人に帰属させることが出来ます。つまり、遺言と同様の機能を果たすことができるのです。
信託監督人を就けることで、安全に利用できる
任意後見では、監督人が必ず就任することで、後見事務についての相談対応や助言・指導がされることで、後見人を支援し、また、後見人の業務を監督することで、財産管理等の安全性を確保します。
この点、家族信託では、原則として監督人が就きません。そのため、継続的な支援者がおらず、監督者もいないことから、適切な信託運用と安全性に構造上の問題が生じてしまいます。また、家族信託は、新たな仕組みであるため、契約書のメンテナンスが必要となる可能性が高くあり、その必要性のモニタリングが必要となります。
こうした問題を回避するために、信託監督人というシステムを、家族信託には組み込むことが可能で、これにより、適切かつ安全な信託運用の保全ができます。