家族信託とは。司法書士がわかりやすく簡単に解説!
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家族信託の主な利用動機となる資産凍結問題とは
家族信託は、様々な活用が見込める仕組みですが、現状の活用は、高齢者の資産凍結問題の備えがほぼ全てです。そこで、家族信託を知るために、まずは、資産凍結問題について、簡単に知っておきましょう。
資産凍結問題とは
「認知症になると預金が下ろせなくなる」といった広告や雑誌等のキャッチコピーが目に入ったことはないでしょうか。認知症といっても症状が軽度なものもあるので、認知症=預金が下ろせないというのは言い過ぎかとは思いますが、資産の凍結とは、まさに預金が下ろせないといった、自分の財産であるにも関わらず、それを動かすことが出来なくなる事態を指します。
これは、預金に限らず、証券取引や融資、不動産の売買、賃貸借契約やリフォーム等、自身の財産全般に渡り生じる問題です。
預金を下ろしたり振込んだりが出来なければ、日々の支払いに支障が生じますし、賃貸アパートの新たな賃貸契約が出来ないと賃料収入が滞り、介護施設入居により大きな支出が必要となり、また、自宅が空家となることから、自宅を売却したくても出来ない。こうした、日常生活そのものに支障を及ぼす死活問題が、資産凍結なのです。
図解で分かる資産凍結
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図解で分かる資産凍結で困ること
資産凍結問題はなぜ生じる?
資産凍結の問題は、認知症や事故、病気等に伴う脳機能の低下により、判断能力が減退することで生じます。少し細かくロジックをご説明致します。
民法上、法律行為には意思能力(以下、「判断能力」と言い換える)が要求され、これを欠いた法律行為は無効とされています。
法律行為には、不動産の売却やリフォームといった大きなものだけでなく、預金取引のような日常行為も含まれ、あらゆる「取引」は法律行為を前提とします。
法律行為に必要な判断能力は、その行為ごとに、必要程度が異なります。
有効な法律行為を行うに足る判断能力を有しているかの判断は、形式的で明確な判断基準がなく、取引当事者の主観に依存することとなります。
例えば、不動産売買であれば、買主、融資金融機関、仲介会社、司法書士、土地家屋調査士等、預金取引であれば金融機関が法律行為の相手方となりますが、この取引の相手方が、相応の判断能力を欠くと判断することで、当該法律行為を行えないこととなります。
取引の相手方としては、その取引が後で無効とされたり、取り消しされたりすると損害を被る可能性もあり、困ってしまいます。また、コンプライアンスが厳しくなっている昨今において、判断能力を欠いた相手との取引を実行することは、レピュテーションリスクを負うこともあり、取引を避けるという選択がなされます。
つまり、ここで言うところの資産凍結は、法律的に「あなたは法律行為を行えません」とされるものではなく、法律行為の相手方が、その法律行為を行うに足る能力を欠いていると判断することで、取引に応じくれないことにより生じます。
資産凍結問題は他人事ではない
認知症や事故、病気により生じ得る資産凍結の問題は、資産を多くお持ちの方だけでなく、誰にでも生じ得る問題です。
認知症に関して、有病率というデータがございますので、以下に掲載しておきます。
「自分は大丈夫」、「資産は少ないから」と放置してしまうのは危険ですので、自分事として捉え、しっかりと備えを考えることが大切で、この備えの方法として有用なのが、本記事の本題である家族信託です。