家族信託で後悔しないために必要なこと
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家族信託の利用をなぜ後悔することになるのか
家族信託は、平成19年の信託法改正により可能となった新たな仕組みであることから、専門家側の熟練度の問題、金融機関、行政機関の整備が整っていない問題がございます。それぞれ問題をみていきましょう。
専門家の熟練度の問題
家族信託は、報酬相場が高いこともあり、安易に手を出してしまう専門家も少なくありません。家族信託は、法務面の知識のみでは安全なサービス提供は不可能で、税務の問題、金融機関の取扱い、行政機関の取扱いにおける問題も理解している必要があるのですが、こうした知識がないままサービス提供をしてしまっている専門家が数多くいるのが実態です。
要するに、専門家の熟練度が足りない故に問題が生じてしまい、お客様を後悔させてしまうのです。
金融機関等側の問題
家族信託では、一般に、信託された金銭の管理を、専用の口座(信託口座と呼称されています。)で行います。この信託口座は、通常の口座とは異なり、受託者AさんとAさん個人を区別した口座になります。そのため、Aさん個人が仮に預金差し押さえを受けても、受託者Aさんは別なので、信託口座は差し押さえされません。一般に信託口座で信託された金銭を管理するのは、受託者に分別管理義務という、個人の財産と受託者として管理している財産を混同しないよう、分けて管理する義務が信託法上課されているためです。
しかしながら、この信託口座の開設が可能な金融機関は、増えてきてはいるものの、まだ一部という表現が適切と言える状態であり、口座開設可能だけれども、指定した信託会社や専門家に費用を払って、その指定先を通すことを条件とする金融機関もございます。これでは、家族信託を利用されるお客様に、二重の負担を課す可能性が出てきてしまいます。
また、信託内融資といって、受託者が信託財産を担保として起こす借入があるのですが、これに対応している金融機関は、口座開設可能な金融機関よりも少ないです。対応している金融機関であっても、それぞれ独自のルールが設けられていて、そもそも家族信託を利用する意味を失わせるルールがあったり、指定先を介さなければ対応しないような金融機関もございます。そして、こうした金融機関ルールは頻繁に変更されていることも問題として挙げられます。
こうした問題は、家族信託という仕組みが新しい故に対応出来ていないことによると考えられますが、この対応という意味は、対応することが自社の利益になることも必要であるという意味になります。営利企業である以上、金融機関の考えは理解できる一方で、社会インフラの側面がある以上、顧客に負荷を掛けるような現状は、早期に解消されることが望まれます。
行政機関側の問題
先にご説明しました、空家控除の特例が使えないという取扱いの他にも、登記手続き上の取り扱いや、家族信託終了時の登録免許税がケースによっては増額されてしまうこと等が挙げられますが、取り扱いが不明確であったり、ある日突然、税務通達等がなされて、信託契約時には論点にならなかった事項が問題になったりすることがございます。
こうした問題のしわよせはお客様にいってしまうものであり、家族信託サービスを提供する専門家等の立場としては避けなければならないのですが、専門家側としても、責任を負うことが難しい側面がございます。